読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

全力日和

俳優 窪田正孝さんに前のめり

ふがいない僕は空を見た

f:id:somewak:20150717104822j:image

 今月CS放送でオンエアしていました。秋にタナダユキ監督の新作『ロマンス』が控えているから、その宣伝も兼ねてかな?R15版のほうでしたが有難い!録画させていただきました。
 
この映画は完全なる沼落ち後に劇場まで足を運んだ最初の作品で、映画館で2度、レンタルで1度観ています。ただ、当時の私はまだまだ子育てにどっぷりで、今のように感想を綴る余裕が無く、さらに、この映画の原作が山本周五郎賞を受賞しているということで「何かとても高尚な、私なんかが簡単に感想を書いてはいけない」という(笑)妙な〝壁〟がありました。とーぜん福田くんという役自体に対するハードルも高く……(^^:)今回、満を持してのエントリです。それでは感想、行ってみよっ!
 
いや容赦ない。もうあらゆる箇所でホント容赦のない映画でした。まず最初にガツンとやられたのは、福田くんの尋常でない「生活感」。所帯染みた、という意味ではなくて「とにかくギリギリな感じ」ね。家に寄り付かない母親に代わって、痴呆の祖母の面倒を見、暮らしを営んで行く。その殺伐とした感じが全身から匂いたっていて、その佇まいにまず目を奪われます。
 
たくさんの請求書がポストに入っていたり、店長の財布エピなど、具体的な困窮シーンも実際あるのですが、例えばコンビニでの何気ない仕事のシーンや、誰もいない教室で時間を潰したりするシーンこそグッとくるというか…特に福田くんのパートはセリフで押していく演出の手法を取っていないので、黙っているときも演者は休まず発し続けなければならない中、こちらが堪らなくなる何かを、窪田くんは表現していたと思います。
 
日々の生活も、友達付き合いも、将来の見通しも、何もかもが超不安定。生活を支えるというしっかりした子供でありながら、「それだけは絶対に嫌です」の声色など、今にも折れそうな脆さも孕んでる。そんな何とも言えないアンバランスさが、福田くんの最大の魅力ですね。前に観たときは、そういうところまで気付けなかった。いや恐れ入りました。これはヨコハマ映画祭で最優秀新人賞を頂ける訳ですわ。
 
映画全体の感想を少し。オムニバスになってるこの映画ですが、前は1本の映画としての流れを感じることができなかったんです。ま、原作もオムニバスなんでこんなもんかな?と思いつつ。
 
でも今回は急に伝わってきた(笑)各キャラがすごく「生」の中でジタバタしている感じがリアルでした。貧困の中にある自分を諦めを持って見つめながら、同時に微かな期待も持っている福田くん。許されない性癖を、人のために何かすることでどうにか精神のバランスをとっている田岡さん。不妊治療という辛い現実から逃避するためにコスプレする主婦、あんず。そのあんずとの不倫で容赦ない周囲の嘲笑に耐えている卓巳。その他、卓巳のお母さんも、あんずの義母も、大きなくくりで言ったら福田くんのおばあさんでさえ、どうにもならないことを「どうにもならない」とあがきながら生きてるんですよね。そこを大きく転換させることもなく映画は終わるわけですが、カラッとした演出を効かせて、重苦しくなく閉じていく。観賞後、こんなに気持ちよく終わる映画だったっけかなって、思いました。
 
「生」を描くのに用いた表現もハンパなかった。性描写はもちろんですが、いま改めてみると、この団地の扱いというか…住民の描き方や子供の使い方など、ヌルくない部分がいっぱいで、覚悟のある映画だなあ〜と感じ入った次第です。
 
こういう「映画的な」映画には最近出ていないかな、窪田くん。出番はあまりなさそうなんですが(^^:)タナダ作品でどんな輝きを見せるのか。『ロマンス』の公開も楽しみです。